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創業60年のIT企業が挑む、
失敗を恐れない組織づくりと地方拠点が果たす役割
株式会社 データサービス

東京に本社を置きながら、小海町にオフィスを構え、子どもたちへのプログラミング教育、UIターン人材の受け入れなど、地域課題の解決にも一役買うIT企業があります。「0.5歩先のビジネスを見据えて」をミッションに社員の働きがい向上と活気ある組織づくりを目指す取り組み、地域貢献に対する考え方について、データサービス代表取締役社長の坂本哲也さんに伺いました。
創業60年のIT企業が大切にする南佐久地域との縁
データサービスは、創業者が南相木 村で育ち、南佐久実業高等学校(現・小海高等学校)の卒業生であったという縁から、2004年に南相木村に保養施設「おぐら山荘」を、2008年に小海町に「佐久ソフト開発センター」を開設しています。また、南相木村では未就学児と小学生にプログラミングを教える「プログラミング寺子屋」も運営しています。
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佐久開発センターの外観
会社は1964年設立と、IT企業としては老舗と言って良いでしょう。創業者は勤務先だった立川米軍基地でITが活用される様子を見て「日本にもITの時代が来る」と確信し、起業に至ったそうです。
まずはデータ入力サービスを立ち上げ、1970年にソフトウェア開発に進出すると同時にNECの仕事を受注するようになりました。現在もNECグループのパートナー企業として、様々なシステム開発のプロジェクトに関わっています。
開発するのは企業向けのシステムなので直接目にする機会は少ないですが、私たちに身近なスーパーやコンビニ、アパレルメーカーなども含む、様々な企業の業務を支えています。
真面目な技術者集団に「チャレンジ精神」を根付かせたい
顧客企業のビジネスを支えるシステムを開発したり運用・保守するという仕事柄か、データサービスの社員は真面目で、どちらかというと保守的な人が多い傾向にあると、坂本さん。「0.5歩先のビジネスを見据えて」をミッションに、よりチャレンジ精神に溢れた文化を醸成しようと努力しているところです。

データサービスの企業理念
「これからの世の中で事業を続けていくには、私たちが進んで新しいことにチャレンジし、お客様に喜ばれる提案をしていかなければいけません。そのために必要なのが、チャレンジに伴う失敗を許容するマインドと、コミュニケーション能力です。IT技術者には、目の前の仕事を確実にやり遂げることを大事にする真面目な方が多く、それを急に変えることは難しいでしょう。そこで、色々な方をお呼びして社内で講演をしてもらったり、FFS理論(※)を取り入れて社員それぞれの特性を理解した上で力が発揮できる組織編成を考えるなど、皆さんがもっと働きがいややりがいを感じられるような組織づくりに取り組んでいるところです」(坂本さん)
(※FFS理論:適切な人材配置やチーム編成を行うことで組織のパフォーマンス向上を図ることを目的に、個人の思考行動の特性を5つの因子(凝縮性、受容性、弁別性、拡散性、保全性)で分析する理論)
最近の取り組みの中で手応えを感じたのは、一昨年の社員旅行だそうです。
「60周年の記念事業として、沖縄の石垣島への社員旅行を実施したんです。目の前の仕事や東京で起きていることが全てではなく、世の中は大きく動いているんだということを肌で感じてもらいたいと考え、皆さんに色々な経験をしていただきました。行く前はみんなが楽しみにしていたわけではなかったと思いますが、事後のアンケートでは参加したほぼ全員が『良かった』と回答してくれました」(坂本さん)
この結果を受け、坂本さんは次の社員旅行の行き先にベトナムを提案しました。しかし、参加を希望する社員は3割に満たず、実施は保留となっています。坂本さんとしては、慣れ親しんだ日本を出て、経済的にも発展中で勢いのある国に行って刺激を受けて欲しいという考えでした。しかし、外の世界に目を向け、新しいことを吸収しようという気運を高めるには、もう少し時間をかけて働きかけていく必要があるようです。
顧客とともにチャレンジし成長する、新しい関係へ
チャレンジには失敗がつきものとはいえ、顧客に迷惑をかけるわけにはいきません。坂本さんが考える具体的なチャレンジの方法として、ひとつは業務のプロセスを変えてみるというものがあります。例えば、社内で使える生成AIの仕組みを提供しているので、それを積極的に使って効率化を図る、といったことが考えられます。
もうひとつは、顧客に対し、共にチャレンジすることを提案するという方法です。
「新しい分野に関しては、お客様も我々も分らないことが多く、一緒にチャレンジすることで、お互いが成長していくという関係性もあり得ると思います。最初はこちらの手弁当でやりますから、近い将来一緒にビジネスをできるような挑戦を共同でやってみませんか? というような提案をできる社員が、増えていってほしいですね」(坂本さん)

チャレンジ精神に溢れた活気ある職場づくりに力を入れる背景には、それが若手や女性社員の定着に寄与すると考えるからでもあります。
「少し前は、新卒の学生が『静かな会社ですね』と言うことがよくありまして、それは褒め言葉ではないんですよね。女性の採用も積極的に進めているのですが、『IT業界が合わなかった』と辞めていく人もいます。そこで最近は、オフィスに音楽を流したり、ディフューザーによる香りを取り入れたり、健康的で美味しい”置き菓子”を設置したりと、会社の雰囲気を変える工夫も進めています。もちろん給与は大事な要素ですが、人材の獲得競争が激しいIT業界で給与の額だけで勝負するのは限界があります。そんな中で一番重要なのは、働きがいや自らの成長を実感できるような仕事に取り組める会社であるということだと思うんです。そのためにも、社員には外の世界に目を向けてほしいし、今後は海外との仕事も増やしていきたいと考えています」(坂本さん)
佐久ソフト開発センターが担う2つの役割
データサービスには、東京本社の他に札幌、宇都宮、名古屋、長野に拠点があり、それぞれでシステムの開発や保守、営業活動を行っています。
小海町の佐久ソフト開発センター(以下、開発センター)で行っている業務のひとつは、インドの会社が開発したクラウド型サービス「Zoho CRM(Customer Relationship Management)」の問い合わせ窓口です。データサービスが代理店として販売した顧客企業からの問い合わせに対し、基本的な操作方法を教えたり、顧客の目的に叶う使い方を提案したりする仕事です。
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佐久開発センターのオフィス内。メールやチャット、電話で入る問い合わせに対応する
サービスの導入企業は今後も増え、今の人員だけでは足りなくなる見込みです。また、問い合わせを受けるだけでなく、佐久地域の中堅・中小企業に対する営業活動も展開して いきたいという考えがあり、今後センター勤務の社員を増やしていく計画です。
開発センターで担うもうひとつの仕事は、南相木村から受託している「プログラミング寺子屋」の運営です。週末の公民館や放課後の学校で、未就学児と小学生を相手にタイピング、プログラミングに必要な論理的思考、子ども向けのツールを使ったプログラミングなどを教えています。

南相木村の小学生にプログラミングを教える様子
「プログラミング寺子屋」は2017年から続けており、継続して担当しているメンバーは子どもたちとも仲良しです。また、東京勤務のメンバーが手を挙げ、定期的に長野に通って寺子屋の運営に関わった時期もあるなど、会社としても力を入れてきました。坂本さん自身、この事業には大きな意義を感じています。
「文部科学省の学習指導要領では”生きる力”を身につけることを重視し、その土台のひとつに論理的思考力があると書かれています。我々が取り組むプログラミング教育は、まさにその力を育てるものなんです。寺子屋に参加した子どもたちがITを利用するだけではなく”作り手”になるような人に育っていってくれるんじゃないか、そんな可能性を感じながら取り組んでいます」(坂本さん)
自然に囲まれた拠点ならではの働き方の可能性
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左から、本社から訪れたシステム事業本部 特命マネージャーの宮崎哲也さんと、システム事業本部 名古屋営業所 課長 兼佐久ソフト開発センターの責任者の三浦繁さん
開発センターでは現在、20〜50代の男性4名、女性2名が働いています。
ここで働くことになった経緯は様々ですが、地元の小海高校を卒業して新卒入社、東京の本社勤務を経て故郷の佐久穂町にUターンするタイミングでセンターに異動、長野県へのUIターンを機に中途入社……など、この地域で暮らしていきたいという希望を叶えている人が多いようです。
坂本さんは、開発センター勤務の社員を10名程度まで増員したいと考えています。新たに加わってくれる人には、地域の中小企業に「Zoho CRM」の導入を提案したり、利用企業のニーズに合わせてカスタマイズをしたりという仕事で活躍を期待しており、顧客のビジネスを理解しつつシステムの活用方法を提案できるような、いわゆるSE(システム・エンジニア)の経験のある人が望ましいとのことです。また、創業者の母校である小海高校を始めとする地元の高卒者の採用も積極的に行い、地域に貢献したいと語りました。
なお、開発センターがある小海町には、他の拠点の社員が訪れる機会もあります。小海町が都心部の企業向けに提供している滞在プログラム「憩うまち小海 」に参加し、湖畔での森林ウォークやヨガなどを体験することも。これも、目の前の仕事から少し離れ、より広い視野を持つきっかけになります。
坂本さんは、開発センターのオフィスを他の拠点の社員のリフレッシュや越境経験のためにも活用できるのではないかと考えています。
「当社に限らず、IT業界ではメンタル不全に陥る方が少なくないんです。そういう方が開発センターに来て、仕事をしながら農業をする『半農半IT』のような過ごし方をすることで回復していただく、そんなことができないかと考えています。また、地域のイベントの時期に合わせて社員が滞在し、一緒に盛り上げたりしてもいいですね。いつもとは異なる環境で過ごし、その良さや課題を肌で感じることで、お客様への提案内容も随分変わってくるんじゃないかと思います。私自身、南佐久地域の自然や美味しいプルーンなんかが大好きなので、今まで以上に関係を深めていきたいと思っています。」(坂本さん)
文:やつづかえり